2017.02.03 fri 〜 02.22 wed

アートの時間[3]
ブルーノ・ピーフル+根岸功
「化生」

化生(けしょう)とは仏教用語で、化けること、化身、バケモノ、妖怪の類を指す語であるが、仏や菩薩が人として顕れる場合にも用いられる。人でも獣でも、精霊でも仏でもない霊的な者たち。死んでしまった者が転生するまでの、中間的な存在のこと。
山形県大石田町の陶芸家ブルーノ・ピーフルさんの窯は、それ自体が巨大な芋虫のような異形だが、背後の暗がりにうず高く積まれていた失敗作に、僕はまさに「化生」を、見た。
森に突き出た2本の煙突の根元に、窯焚きの高熱に耐えられず、歪んだりヒビが入ってしまった三十余年分の陶器や彫像たちが層を成して、ゆっくりと土に還っていた。土が炎とはげしく戦い、破れた、欠損と煤だらけの姿。僕はむしろその奇形ゆえに、陶器であることや作者の意図をこえた何かが、宿っているように思えた。
僕はすぐさま、展示の構想をはじめたが、灰かぶりの陶器たちは素焼きのものも多く、長年の湿気その他の原因で脆く割れやすくなっていた。またブルーノさんは一度失敗作と決めたそれらを、「作品」と称して公に展示したり、値をつけたりすることを望まなかった。そこで、静物撮影の技術において信頼を寄せている写真家の根岸功さんに依頼して、写真作品として窯の化生を捉え、展示する計画をたてたのだった。
11月、窯が雪に埋まってしまう前に、ブルーノさんと僕は窯の背後に潜り込んで、煤だらけになりながら、撮影するものを発掘し、選別した。それら奇妙なゴーレムたちのことを、ブルーノさんは「友」と呼ぶ。
屋根裏や敷地のまわりにも、まだ膨大な数の「友」がいて、鼠や蛇やミミズたちの棲家になっている。「はじめて外の世界にでるから、夜になったら、あなたの部屋のなかを這い回っているかもね」と、ブルーノさんは髭を撫でながら笑った。(企画:宮本武典)

開廊時間:11:00~20:00(月曜休/入場無料)

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本企画はH28山形県「やまがた若者チャレンジ応援事業」の助成を受けた全4回の山形在住アーティストによる展覧会シリーズ「アートの時間」第三弾として開催するものです。大石田町で30年以上作陶をつづけるブルーノ・ピーフル(1957年・フランス、ル・マン出身)は、大石田の土を使い、自作の薪窯で作品をつくりだします。2016年秋に三日三晩、火を絶やさずにおこなわれた窯焚きと、窯の隅の暗がりで灰をかぶっていた未発表のオブジェ群を、写真家・根岸功(1980年・長野県出身)が撮影。陶と写真のコラボレーションで、森の土と炎が産み出した「化生」の風景を出現させます。
また、会期中は、とんがりビル1階のカフェ「nitaki」にて、ピーフルの陶器にあわせたオリジナルスイーツをお楽しみいただけます。

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ブルーノ・ピーフル/Bruno Pifre
陶芸家。1957年フランス、ル・マン生まれ。フランス・シャルトルのPoteries Du Maraisでの修業を経て、1980年に来日、栃木県益子の陶芸家・島岡達三氏に師事した。1985年、北村山郡大石田町に窯を築く。以後30余年にわたって大石田町で作陶をつづけ、国内各地で個展の開催・グループ展への出品をおこなう。

根岸功/ねぎし・いさお
フォトグラファー。1980年長野県生まれ。2004年東北芸術工科大学情報デザイン学科卒業、2006年東京総合写真専門学校研究科卒業。広告プロダクションにてアシスタントとして勤務後、制作会社にてコマーシャルフォトの撮影を中心に活動し、2016年から東北山形に拠点を移す。現在、フリーフォトグラファーとして活動中。

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2017.02.04 sat 15:00-16:30

アーティストトーク&
オープニングレセプション

ブルーノ・ピーフル(陶芸家) ×
根岸功(写真家) ×
宮本武典(キュレーター)

ケータリング:nitaki入場無料/申込不要

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会場:KUGURU
〒990-0042 山形県山形市七日町2丁目7-23 とんがりビル1階
※専用駐車場はございません。近隣の有料駐車場などをご利用いただきますようお願いいたします。
問合せ:080-5068-8122、kudoyuta.r@gmail.com (ミサワクラス・工藤)
企画運営:工藤裕太、是恒さくら
広報デザイン:平野拓也
協力:株式会社マルアール、東根市公益文化施設「まなびあテラス」、認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭、岡部信幸、宮本武典
助成:平成28年度「やまがた若者チャレンジ応援事業」採択「七日町クリエイターズヴィレッジ構想」